ふと目が覚めると、もう3時になっていた。

お腹が空いて、冷蔵庫に向かった。

我が家の冷蔵庫には磁石のついたホワイトボードが貼ってあって、そこに今日と明日の予定を書いている。

見ると、今日の予定に"病院"と書いてあった。

すっかり忘れていた。

今日は姉のお見舞いに行くと約束していたのだった。

急いで準備をして、家を飛び出した。

病院の受付で姉と自分の名前を言い、早歩きで病室に向かう。

「お姉ちゃん、入るね」 

そう言って、病室のドアを開けて中に入った。

遅くなってごめんねと言いながら、ベットに近づき、ベットの横にある椅子に座った。

「お姉ちゃんの好きな、」

りんご買ってきたよーと言おうとして、お姉ちゃんの顔を見ると、様子がおかしかった。

「お姉ちゃん、どうしたの?大丈夫だよ、」 

落ち着かせようとして、肩に手を伸ばした。

「触らないで!」  

姉は虚な目をして、"近づかないで" "触らないで" "ごめんなさい"と繰り返し、呟いている。

初めて姉に拒絶されて、私は少し固まってしまった。

でもすぐにハッとして、ナースコールを押した。

『美礼さん?どうされましたー?』

槙本さんの声が聞こえた。

「槙本さん!姉が発作起こして!」

そう伝えると、すぐ行きますと言われた。

向こうの声が聞こえなくなって、病室には姉の声だけが響いていた。

私が近づくと姉が怖がるから、ベットから一番遠い、ドアの近くにいた。

しばらくして、大丈夫ですか!と言いながら槙本さんが部屋に入ってきた。

「朱音さんは一旦外に出て待っててください!」

外に出ても、部屋からは槙本さんの美礼さん大丈夫だよ、落ち着いてねと言う声が、聞こえてくる。

今回発作を起こしたのは、間違いなく私のせいだった?

その場に座り込んで耳を塞いだ。
何も聞きたくなかった。
目を瞑った。
何も見たくなかった。

お母さんならこんな時どうしたのだろうか。