あの子、溺愛されてるらしい。

放課後、帰る前にお手洗いに行ってかばんを取りに教室に行くと何人かの男子と女子が固まって話しているのが見えた。


そのまま教室に入ろうとした時、私は足を止めた。



「昨日、中條栄斗と文月さんが公園でデートしてたらしい。」

「私はキスしてたって聞いたけど。」

「マジで…?」

「怖くないのかな。中條先輩のこと。」

「気に入られてるから平気なんだろ。」



昨日の公園…?


誰もいないような小さな公園でのことがもう広まっているんだ。誰が見ていたんだろう。


デートしてたわけではないし、キスなんてしてない。噂がどんどん脚色されていく様子を目の当たりにして少し怖くなった。



「もしかして…文月さん、脅されて付き合ってるんじゃない?」



誰かがそう言うとみんなが同意し始めた。断るのが怖かったんだとか、拒否したら殴られるとかありえないことばかりみんなが口々に言い始める。


中條さんはそんな人じゃない。すごく優しい人なのに…!


我慢できなくなって教室のドアに手をかけた瞬間。


後ろから誰かに腕を引っ張られた。振り返るとそこには中條さんがいた。