海棠くんがちょうど歌い終わった直後、ガチャリとドアが開く。
現れた人物を見て私の目玉が飛び出そうになった。
「お迎えに上がりました」
「なっ、なんで薺がいるの!?」
「皆様、お楽しみのところ申し訳ございません。
門限になりますので李奈お嬢様は先に帰らせていただきます」
「えっ……」
「さあ、帰りましょう」
「ちょ、ちょっと!!」
私は強引に薺に腕を引っ張られる。
帰り際、茉莉花に何かを渡していた。恐らく私の分のカラオケ代金だと思う。
「それでは失礼致します」
恭しくお辞儀し、そのまま私を連れて行く薺。
「ちょっと離してよ!!」
「何の予定かと思えばあのようなところに行かれていたとは。そのために共学を受験されたのですか?」
「そ、そうよ!悪い!?私だって高校生だもん。彼氏くらい欲しいわよ!」
ヤケクソで言ったら薺はピタリと止まった。
「……本当にそう思っていらっしゃるのですか?」
え……、なんか薺、怒ってる?
目が怖いんだけど。
「お、思ってるけど?そもそもあんた、なんでここがわかったの?」
「スマホのGPSですぐにわかります」
変態執事はそれくらいのこと当たり前にやるわよね……。



