満咲家は旧華族の末裔である由緒正しい家柄。代々警察官の一族で私の父は県警本部の本部長。母は創業百年の老舗呉服店の娘。
 うちは分家だけど、私はこう見えてもお嬢様である。

 だから執事なんて者がついてるわけだけど。


「お嬢様、実は先日からお車の修理を行っているところでして。なので今朝は電車で私の他に3名のSPを付けての登校になります」

「多いわ!!」


 とにかくこの執事、癖が強すぎる。

 薺は私が5歳の頃に執事見習いとしてやって来た。


「初めまして、李奈お嬢様。今日からあなたの執事となる、小石川薺です。薺とお呼びください」


 初めて会った薺は、5歳の私に目線を合わせてくれる優しくて紳士的で王子様みたいだった。

 いつでも私の味方をしてくれるヒーローみたいな存在だった。

 なのに、一体いつからこんな変態になったんだろう……。


「電車くらい一人で乗れるわよっ」
「いけません。そもそも切符の買い方もICカードの使い方もご存知ですか?
電車というのは悪質な痴漢も出ます。もしお嬢様に指一本でも触れよう者ならその者は地獄送りにしなければなりません」
「怖いわ!!
〜っ、もう大丈夫だから!子ども扱いしないでよ!」