次の日。仕事帰り不動産屋に向かった。

 早く引越し先を決めなくては。と分かっていたけど、真白さんとの暮らしの居心地の良さに甘えていた。


 ストーカー問題が解決した現在。同居する理由がないのだ。なにより、真白さんは「この生活も終わり」と零した。その言葉の意味くらい理解できる。



 

 本腰を入れて探すと、条件に合った部屋はすんなりと見つかってしまった。家賃も会社からの距離も、希望通り。即決してもいいくらいの物件だった。



 好条件なのに即決が出来ないのは、真白さんと暮らしに未練があるからだろう。物件の資料をいただいて、その日は帰ることにした。



 玄関を開けて、暗い部屋に照明の光を灯す。真白さんは帰ってきていない。長時間誰もいなかった部屋は、冷たい冷気を纏っている。


 この部屋にくるのも、あと何回だろう。今日で最後かもしれない。