致し方ないので、上司お持ち帰りしました






 キッチンで飲み物を準備して、リビングに戻る。真白さんはリビングテーブルの上に乱雑に置かれていた賃貸情報のチラシを手に取って見ていた。
 
 
「泉さん。引っ越すの? もしかして、ストーカーのせいで?」

 
 ちょうど更新の時期で、長年の住んでいたアパートは大家さんが変わったとかで、家賃が値上げされると通達が来ていた。これを機に引っ越しも悪くないのかなと思い、新しいアパートを探していたのだ。



 
 ~♪

 口を開こうとした瞬間。タイミングよく静寂な部屋に着信音が鳴り響く。


 発信源は私のスマホだ。見なくても相手が分かってしまう。鳴りやまないスマホを放置して、ごくんと唾を呑み込んだ。


 相手は楓くんだ。残念なことに彼以外、私に電話をしてくる人はいないのだ。


 なぜこんなにも私に執着するのか分からない。彼とはあれっきりだと思っていたのに。簡単に終わらせてくれないようだ。



「泉さん? 電話大丈夫?」

「ははっ。元カレからだと思うので大丈夫です」

「元カレ? さっき言ってた待ち伏せしてたやつ?」

「元カレが連絡しつこくて……」



 鳴り響く着信音がようやく止んだ。



「元カレは、だいぶ未練があるんだね」

「……」



 楓くんがしつこく追いかけてくるのは、未練からではない。理由はきっとお金だ。