致し方ないので、上司お持ち帰りしました





「真白さん? 大丈夫ですか?」

「ひ、ひぃあ?! あ、うん。大丈夫。日頃嗅がない匂いに動揺している……」



 「日頃嗅がない匂い」と言う単語に嫌悪感を抱いたけど、グッと飲み込んだ。

 長身の身体を縮こませてリビングにちょこんと座る姿は、なんだか可愛らしかった。



「これからのこと考えませんか? 秋月さんは指導していた後輩なんです。なんだか責任を感じてしまうというか……ストーカー行為をしてしまい、申し訳ありませんでした」

「泉さんが謝ることじゃないよ。それにストーカーって言ってしまったけど、待ち伏せされたりするだけで、実害はないからね」

「家に何日も待ち伏せされている時点で、立派なストーカーな気がします。あの、なんで待ち伏せされているか、理由はわかりますか?」



 秋月さんの好意を勝手に伝えていいのか、気が引けて遠回しに真白さんに聞いてみた。



「あー。狙われているんだろうなってのは分かる」



 さすがに童貞の真白さんでもそれは分かったらしい。



「秋月さんの厄介なところは、自分の勝利を信じて疑わないところ。彼女多分モテてきたでしょ? だからか、男はみんな自分を好きになると勘違いしているようだし。自信に満ち溢れていて、拒否しても伝わらなそうなんだよな」




 恋愛経験がなくても、秋月さんのモテてきた故のやっかいさに気づいていたようだ。互いに深く頷き合った。