その日、真白さんに抱かれた夜、夢を見た。
どこか懐かしくて、あたたかい夢だ。
「涼香……」
私の名前を呼ぶ懐かしい声がした。
何度も何度も、聞いた声。
何度も何度も、もう一度聞きたいと願った声だ。
「おばあちゃん!」
「涼香、」
「おばあちゃん。私ね、たくさん話したい事ある! わからないの。おばあちゃんの予言通りに生きているのか、わからないの」
「涼香、ご縁が見つかってよかったね」
「ご縁って、真白さんのこと? 真白さんは童貞卒業したけど大丈夫だよね? 私、彼が大好きなんだ」
「おばあちゃんは、涼香と結ばれたご縁を引き合わせただけ。あとは涼香たち次第……」
「それって……」
「涼香、幸せになりなさい」
「おばあちゃん! おばあちゃん!」
私の呼びかけに反応せず、おばあちゃんの姿が遠のいていく。
もっと、話したいのに――。
目が覚めた時、心に残っていたのは、あたたかな感情だった。そして、夢の中でおばあちゃんはとびきり優しい笑顔で笑っていた。
祖母が導いてくれた不思議なご縁。
隣には愛しい人が寝息を立てて眠っている。
幸せは自分にしか感じられない。
今心にあるこの感情は、胸を張って伝えられる。
「おばあちゃん、私。幸せになれたよ」
この声は、天国の祖母に届くだろうか。
彼が起きたらこの話をしよう。
そして、真白さんにも伝えよう。
今、幸せです。と。
【完】