「ムカつく、伊織だけモテてさ……」

私は伊織に聞こえないよう小声で呟き、買ったオレンジジュースを一気に飲み干した。

幼なじみの伊織とは、家が近所で保育園の頃からずっと一緒だ。母親同士が仲がよかったこともあって、小さい頃はよくお互いの家で遊んでいた。

そんな伊織は、小さい頃から顔立ちが周りにいる子より華やかで、「芸能人目指せるわよ!」と近所に住んでいるおばさんたちがデレデレしていた。保育園でもいつも女の子に囲まれていたし、先生もデレデレしていたと思う。

小学校に入学すると、伊織はさらに女の子からモテるようになった。そして、伊織の幼なじみでよく一緒にいる私は、伊織を狙っている女の子たちからことごとく嫌われ、友達がほとんどできなかった。中学も同じ。

友達と放課後遊んだり、恋人を作ったりするアニメのような青春を送るには、伊織と離れるしかない。そう思って高校は伊織と別のところを受けようとしたのに、志望校に私は落ちてしまい、伊織が通うことになった高校の二次募集を受け、泣く泣くその学校に通うことになった。当然、伊織がそばにいるせいで思い描いた青春はなかった。

そして、大学。神様は意地悪なのか、私は受験する学校を教えていなかったのに、伊織が試験会場にいた。そして、二人とも受かった。しかも学部も同じ。

伊織がやっぱりそばにいるせいで、私が異性に話しかけられることはない。おまけに私と伊織は付き合っていると周りに思われているみたいで、合コンなどに誘われることもない。おかげで、彼氏いない歴=年齢を更新中だ。