美紅は、自分の中に落ちてきた答えを抗うことなく受け入れる。途端に胸が幸せで満たされ、こんな状況だというのに笑みが浮かんでくる。
(そっちがよくて、どうして私だけはダメなの?何時間話し合ったとしても、この人とは永遠に分かり合えなさそう……)
美紅はそう思いながら、次にバーに行ける日を探した。
バーに行ける時間ができた日、午後十一時に美紅はこっそり家を抜け出し、歩いていく。ヒールが道を歩く音が、今日はやけに響いた。
「真田さん、こんばんは」
「嬢ちゃん、また来たのかーーー」
いつものように「こんな時間に出歩くな」と軽く注意しようとする渉の唇に、美紅は素早く指を当てる。そして、言った。
「今日だけ、今日だけでいいんです。私のことを年下の妹みたいな存在じゃなく、一人の女性として見てくれませんか?」
「じょ、嬢ちゃん……」
顔を赤くする航に、美紅は「私は「嬢ちゃん」ではありませんよ」と言い、航の隣にいつものように座る。航はしばらく「あ〜……」と両手で顔を覆いながら言った後、小さな声で呟くように言う。
「美紅さん」
その口から紡がれた名前に、美紅の胸が高鳴っていく。ただ名前を呼ばれただけだというのに、全身に喜びが駆け巡っていく。いつも誰かに呼ばれているこの名前すら、彼を前にすると何か特別なプレゼントのように感じてしまうのだ。
「航さん」
お返しと言わんばかりに、美紅も彼の名前を呟く。航の反応をチラリと目を動かして伺うと、彼は耳まで赤くしてカクテルを見つめていた。飲んでいるのはXYZだ。
「いきなり、どうしたんだ?今日は何だかいつもと様子が違う」
航に見つめられ、美紅はドキリと高鳴る胸元を掴み、ゆっくりと息を吐く。これからすることは、生まれて初めてすることだ。指先が震え、緊張してしまう。だが、もう覚悟を決めたのだ。美紅は口を開く。
(そっちがよくて、どうして私だけはダメなの?何時間話し合ったとしても、この人とは永遠に分かり合えなさそう……)
美紅はそう思いながら、次にバーに行ける日を探した。
バーに行ける時間ができた日、午後十一時に美紅はこっそり家を抜け出し、歩いていく。ヒールが道を歩く音が、今日はやけに響いた。
「真田さん、こんばんは」
「嬢ちゃん、また来たのかーーー」
いつものように「こんな時間に出歩くな」と軽く注意しようとする渉の唇に、美紅は素早く指を当てる。そして、言った。
「今日だけ、今日だけでいいんです。私のことを年下の妹みたいな存在じゃなく、一人の女性として見てくれませんか?」
「じょ、嬢ちゃん……」
顔を赤くする航に、美紅は「私は「嬢ちゃん」ではありませんよ」と言い、航の隣にいつものように座る。航はしばらく「あ〜……」と両手で顔を覆いながら言った後、小さな声で呟くように言う。
「美紅さん」
その口から紡がれた名前に、美紅の胸が高鳴っていく。ただ名前を呼ばれただけだというのに、全身に喜びが駆け巡っていく。いつも誰かに呼ばれているこの名前すら、彼を前にすると何か特別なプレゼントのように感じてしまうのだ。
「航さん」
お返しと言わんばかりに、美紅も彼の名前を呟く。航の反応をチラリと目を動かして伺うと、彼は耳まで赤くしてカクテルを見つめていた。飲んでいるのはXYZだ。
「いきなり、どうしたんだ?今日は何だかいつもと様子が違う」
航に見つめられ、美紅はドキリと高鳴る胸元を掴み、ゆっくりと息を吐く。これからすることは、生まれて初めてすることだ。指先が震え、緊張してしまう。だが、もう覚悟を決めたのだ。美紅は口を開く。

