『琴乃、帰るぞ』

自分の席で本を読んでいたら、トントン、と肩を叩かれて後ろを振り返る。

『今日も来てくれてありがとう、拓真』

『そんなんいいから、行くぞ』

私のカバンを持って足早に教室を出て行く拓真に、慌てて駆け寄る。

それでも拓真の歩くスピードは変わらない。

やっぱり、私と一緒にいるのは嫌だよね……。

一つ下の幼馴染の拓真、もとい鳴宮拓真はこうして毎日耳の聞こえない私を教室まで