ありがとうって伝えたい 祖父編

『よく頑張ってくれたな冬実! 産まれた! ちゃんと産まれてくれたぞ! 俺達の子だ!』

 待ち望んでいた我が子が五体満足で産まれてきてくれた歓喜、目を覆いたくなるような難産をやり遂げた妻への労いと感謝が涙となって溢れた。

 景の言葉通りだった。祖父が今まで培い積み重ねてきた想い、行為、感情、生活……そんな祖父の全ての一部が風のようなものとなって花那の中を通過していく。

『花那、おい花那やー、お前花那って言うんだぞー、うわっ笑ったぞ、なんて可愛い子なんだー!』

 不思議だ。我が子を初めて抱きしめたとき、溢れる愛情は妻を抱きしめる時とはまた違うものだと驚いたものなのに、孫を抱きしめた時もまた全く別物の愛情が溢れてしまうのだから。

 花那は気が付けば泣いていた。涙が止まらなかった。
 魂の最奥に近づけば近づくほど増えていく花那への想いはまるで宝物のように輝いて見える。