「陽菜!」

見事に布の中に収まった。

「と、透、戻ってきたよ。」

「ああ…!そうだな…。」

透が泣いてるのを出会って初めて見た。私は安心して欲しくって綺麗な顔を触って涙を拭ったけど、全身の力が抜けて目も閉じてしまう。

「ひ、陽菜?」

こんなに震えた怖がってる声も初めて聞いたよ。

「大丈夫、だよ。」

大丈夫。私は死なない。透のそばに居るために。

「陽菜!陽菜!」



「ん?」

目を覚ますと真っ白な天井。手に温かさを感じて見ると透が私の寝てるベッドに突っ伏して寝ながら私の手を握っていた。
辺りを見渡すと、ここは病院みたい。体を起こそうとしたら、

「痛たた、」

痛くて無理だった。その声に反応して透が起きた。

「陽菜…!」

「透。
ね、私大丈夫だったでしょ?…わあ!」

元気だと見せるために笑顔で話すと怪我人の私を気遣いつつも優しく抱きしめてくれた。
「よかった!良かったよ…。」

そう言って涙を堪えてるような声で長い間抱きしめられていた。


「痛いところは無い?」

やっと離されたと思ったら、不安そうに聞いてくる。

「少し体が痛むかな。」

「そうか。他には変なところないか?」

「うん!あ、そういえば、」

痛いところがないか自分で触ってると、ポケットに入ってるものを見る。

「これ、誰かのナイフみたいだけど、誰だろう。」

名前を見ると、「西園寺 澪」と書いてある。

「やっぱり、澪がこの火災の主犯だな?」

私はビクッと揺れる。隠すつもりは無いけど、透は気づいてたんだ。

「陽菜を探しに来た時にたまたま澪があの建物に火をつけてるところを見たんだ。写真も撮ってある。それに、澪は片時もこのナイフを離さない。そのナイフを陽菜が拾ったなら澪が犯人というのは確定だな。」

透は怖い顔でにやっと笑う。こんな顔もするんだ。

「そういえば、陽菜、好きって言ってくれたな?」

あ、忘れてた。西園寺さんの事と怪我のことで頭がいっぱいだった。思い出した途端に顔が熱くなる。

「俺の気持ちに向き合ってくれて、一生そばに居てくれるって事でいいのか?」

恥ずかしいけど、しっかり透の顔を見よう。

「うん…!
…好きだよ…。」

「陽菜!」

また抱きしめられた。温かく優しいこの腕の中に帰って来れてよかった。諦めなくてよかった。
好きという気持ちに気づいてから言葉にするのが遅れてごめんね。

「これから、よろしくな!」

「うん!よろしくお願いします!」

私たちはその後すぐに両家に伝えて正式な婚約をした。