通されたリビングには、古庄がお願いしておいた通り、静香の両親も同席してくれている。さしずめ二度目の挨拶に来たといった風に受け取っているのだろう。静香の両親はいかにも静香の親らしく、上品で柔和そうなたたずまいで微笑んでいる。


才色兼備な娘。静香はきっと自慢の娘なのだろう。その娘の結婚を良いものにしようと、最善を尽くそうとする意気込みのようなものを、ひしひしと古庄は感じ取った。


何よりもこの家全体を包んでいるこの幸福感……。

それを今から自分はぶち壊そうとしているのだから、それ相応の罰は覚悟しなければならないだろう。


甲斐甲斐しく静香が冷たいお茶を出してくれて、リビングのソファーの古庄の隣に座る。それで、その場を和ませる何でもない話題が持ち出される前に、古庄は思い切って立ち上がった。

何事かと、静香も静香の両親も古庄を見上げる。
その何の疑いもない視線から逃れるように、古庄は目を伏せるとソファーの横に移り、そこに正座をして深々と頭を下げた。


古庄の行動に呆気にとられる静香と、その両親。

そんな空気を切り裂くように、古庄ははっきりとした口調で言った。