「……すみません。ちょっと席を外します」


真琴はこわばらせた顔のまま立ち上がり、逃げるように職員室からいなくなってしまった。


そんな様子の真琴の背中を見守るように見送って、古庄はため息をつく。


——もしかすると、芳本さんより賀川先生の方が深刻なのかもしれないな……。


世の中には、友達の彼氏と親密になり、結果的には横取りしても、平気で付き合えてる女が少なからず存在する。
でも、真琴はそれができない人だった。真琴=誠という親から授けてもらった名前の通り、誠実に真面目に、それが真琴の生き方と言っても良い。
そんな真琴にとって、静香と古庄との関係はかなり精神的に堪えているに違いない。


——あと7ヶ月…。あの日から1年が経っても、今のままじゃ付き合うことなんて難しいかも……。


そんな弱気な思いが、古庄の思考を占拠してきたが、振り払うように頭を左右に振った。


——俺はずーっと何年も、〝今のまま〟を続けていくつもりなんてないからな……!



そんなことを考えているうちに、チャイムが鳴った。今日の日課も終わり、これから清掃の時間だ。