そして現在——

古庄は2月の凍てつくような冷え込みの中、自転車を飛ばして外出先から戻ってきた。


暖かい職員室で、息を上げながら真琴の隣に立った古庄。その顔が赤らんでいることで、真琴は外の寒さの厳しさを知った。


「この寒い中、外出してたんですか?」


「ああ、……うん」


古庄はコートを脱いで椅子の背もたれにかけながら、真琴に向かって頷いた。


そして、次の言葉を告げようか告げまいか、少し躊躇する。古庄のその微妙な表情を、真琴は敏感に察して、古庄に無言のまま問いかける。

古庄は真琴にだけはきちんと言っておこうと、腰かけた椅子を真琴の方に向けて、改まった。


「……銀行行って、芳本さんに金を払い込んできた」


〝芳本さん〟という名前に、真琴の肩がピクリと反応した。表情をこわばらせて、古庄へと視線を合わせる。


「慰謝料とかじゃないよ。キャンセル料を折半した負担分をね……」


古庄の元婚約相手が〝芳本さん〟ということは、職場の人間のほとんどは知らない。ごく普通の会話のように聞こえているかもしれないが、真琴にとっては深刻な話題だった。