真夏の太陽がジリジリと容赦なく照り付けていた。

陽炎が立つような路上で熱線に炙られ、古庄は額から流れ出た汗を手の甲で拭った。

まさに、地獄の業火。

しかし、これからきっと居場所がないほどの、もっと過酷な責め苦が待っている。

古庄のこれまでの人生で……、そしてこれからの人生でも、これほどの試練はないだろう。

だけど、今日決心したことは成し遂げなければならない。自分が自分として生きていけるために。自分が思い描いた人生を生きるために——。


古庄はとにかく足を動かし、閑静な住宅街にある一軒の家にたどり着いた。焼けた鉄の門扉を開けて中に入り、自然石のアプローチをたどって玄関の前に立つ。

そして、深呼吸して息を止め、覚悟を決めると腕を伸ばし、思い切ってインターホンのボタンを押した。


「古庄さん、いらっしゃい」


〝婚約者〟である静香には前もって連絡を入れておいたので、待ちかねていたようで、快く迎えてくれる。

思えば、前に静香の両親に会ったのはどこかのレストランだったので、芳本家に来るのはこれが最初だった。


〝婚約者〟の初めての来訪。
ましてや、それが光り輝くような容姿を持った古庄なのだから、静香は浮き立つような表情を隠せなかった。