この世界には四つの国から出来ている。
一つ目は空に浮ている城を持つ空の国。
二つ目は草原の中に頑丈な城を持つ陸の国。
三つ目は山の奥深くにある木の城を持つ山の国。
四つ目は海の底にある城を持つ海の国。

一番の領土を持つ陸の国は他の国によりもはるかに人口が多く、賑やかな国。
一番の権力を持つ空の国は他の国にない技術で空を飛ぶことを可能にした国。
一番の食物を持つ山の国は他の国にない種や動物などを育て飼育している食べ物が豊富な国。
一番の戦力を持つ海の国は他の国にない海からの攻撃を可能にした国。

そんな四つの国の丁度中央にあるのがスカイハーツ学園。
四つの国から貴族や王子、姫などが多く在籍するこの学園。
ここで学べば今後困ることはないと言われているほどの学園都市。

どんな学園に私、ナユ・アクシアは通っている。



でもこれって完全に『ネイチャードリーム1』だよね?

同じクラスにルヘン王子いるし。
うわ! 本当にフワフワした茶髪してる!
瞳の色も綺麗なエメラルドグリーンなのかな?


ゴホン!
『ネイチャードリーム1』の説明をしよう!
『ネイチャードリーム1』は通称『ネイドリワン』と呼ばれている乙女ゲームだ。
ヒロインであるリリー・サプテーンになり色んな王子からの求婚される。
他の乙女ゲームと違うのは兎に角沢山口説かれることだ。
他の作品なんて目じゃない。
そこがこの作品の魅力!

というのも、この作品のヒロインのリリーは山の国のお姫様。
山の国は一番の食料量を誇っており食糧難になることが絶対にありえない国。
そんな国とお近づきになりたい他の国王子たち。
最初は山の国が欲しいためにリリーを口説きまくるんだけど、リリーの真面目な面や国について真剣に考えてる姿にドンドン本気になっていく。
だから前半は国の為の照れのない口説きから、後半は照れありの本気の口説きになる。
でも口説かれることには間違いない!!
もう本当にずーーーーーと口説かれる!

そんなリリー・サプテーンの弟でありサポートキャラであるのが同じクラスのルヘン・サプテーン。
優し気な表情から考えられないほど腹黒で姉であるリリーの為に学園の情報を仕入れてくるシスコン。


だったと思ったんだけどなぁ…。


「やあ、ナユ」
「御機嫌よう、ルヘン様」
「ふふ。 相変わらず堅いね。 もっと楽にしていいのに」
「それは難しいですわ。 貴方様は山の国の王子。 そして山の国の王位継承権一位。 変わる私は海の国の貴族に過ぎませんわ」
「確かにそうだね」
「えぇ」
「だけど王子と貴族の前に僕たちはクラスメイトじゃないかい?」
「そうですわね?」
「ならクラスメイトらしく敬語はなしでいいとは思わないかい?」
「…確かにそうですわね」
「ちゃんとした場で気を使ってくれればいい、今はクラスメイトのルヘンとして仲良くして欲しんだ。 ダメかな?」


うわ。
その言い方ずるい!
でも私は知っている。
この仔犬のような顔で考えているのは、海の国王族の情報について!
このクラスには海の国出身は私しかいない。
恐らくリリーの為に海の国について聞きたいのだろう!
つまりだ!
それとなく海の国王族の情報を言えば、そうそうにルヘンから解放されるといわけだ!
いや別にルヘンが嫌いというわけじゃないし、ルヘンといい友達になればウハウハだが、それ以上に私もお婿さん候補を探さないといけない。
ここがネイドリだった場合まず王族は無理だ。
ヒロインの弟で『ネイチャードリーム2』の攻略対象のルヘンも同じく!

つまり私はアンタに構っている無駄な時間はない!!

私は私の幸せのために頑張るのよ!!
私だけを愛し、口説いてくる殿方を見つけるの!!
そして海の国でのんびり生きていくのよ!!!



「そうね。 それじゃあルヘンよろしくね」
「うん。 よろしく頼むよナユ」
「にしてもルヘンは私の国の王子と違って凄く物腰柔らかいのね。 すっごくモテそう!」


いやモテてるのは知ってますけど。


「ふふ、そうかな? にしてもそんなに海の国の王子とは違うのかい?」


よっし! 食いついた!!


「えぇ。 ここだけの話よ?」
といい私はルヘンの耳元に近づき話す。


「私の国の王子、レイン・マイシー様は凄く女性にだらしないのよ」
「そうなのかい? 生徒会で会った時はそんなふうに見えなかったけれど」
「猫被りが上手なのよ。 お城でのパーティーで連れてくる女性はいつも違ったわ。 タイプもバラバラ!」
「タイプって?」
「かわいい子からセクシーな子、年下、年上、とにかく顔がよければだれでもいいみたいよ?」
「へぇ。 そうなんだね」
「逆にレイン様の妹であるララ・マイシー様は一途にスカイハーツ様を想っているっていうのに! あ、これは内緒よ。 ほらルヘンのお姉さんのリリー様とスカイハーツ様は婚約関係でしょう?」
「うん。 絶対内緒にするよ」


嘘つけ。
すぐにリリーに言うくせに。


「私だってレイン様にエスコートされたことがあるくらいだしね」
「…え?」


自分で言うのもなんだけどこの世界での私は顔がいい。
前世では病気でずっと寝てたからメイクなんてできなかったけどこっちの世界では元気な体がある。
しかも顔もいいしね。
海の国の特徴である黒い髪にキラキラした青色の瞳。
スタイルだって抜群!
ボッキュボンですよ!
そんな私もレイン様のお眼鏡にかないエスコートしていただいたことがある。
一度だけどね。


「それって本当?」
「…そんなに疑うってどういうことよ?」
「い、いや。 ナユが美しいというのは分かってるんだよ。 でもいや、その」
「そんなに慌てなくてもいいわよ。 ルヘンのタイプじゃなくてもレイン様のお眼鏡にかなったのは事実だから」
「そんなことない!」
「はい?」


おいおい。
私のことブスって言いたいのか。
ルヘンってこんなキャラだっけ?


「僕のタイプはナユみたいな子だよ! だからレインなんかにエスコートされたのが許せなくてっ!!」



「へ?」



ルヘンは顔を真っ赤にさせ大きな声で告げる。
周りのクラスメイトにも聞こえてしまう声で。
その言葉に私の目は飛び出そうになるくらい大きくなる。

周りの視線に気づいたのかルヘンは首を大きくふりその場に座り込む。




「…こんな予定じゃなかったのにぃ」



私にだけ聞こえる小さな後悔は私がしるルヘンではなかった。
ルヘンは腹黒でいつも優しい表情をしているシスコン。
だけど今目の前にいるのは紛れもない仔犬系男子だ。

いや仔犬系王子とでもいうべきだろうか?



座っていた状態から急に立ち上がりながら「ナユ!」と叫ぶルヘン。
私は驚きながらも「は、はい!」と答える。


「また明日!」
「え、えぇ。 御機嫌よう…?」


そう言うとルヘンは速足で教室から出ていく。
その様子にじわじわと現実を理解しはじめる。
その証拠に赤く染まる私の頬。

いたたまれない私の周りにクラスメイトが集まってくる。


「え、なになにどういうことですの!?」
「ルヘン王子とお付き合いされてらっしゃるの?」
「ナユ、どういうことなの!?」



どういうことなのって、そんなの私が聞きたいわよ!!!