「ーーー以上で、発表を終わります。ご静聴ありがとうございました」

緊張で震えながらも腹部の辺りで重ねられた手に力を込め、最後まで声が上擦っていないか不安を覚えながら上山詩織(うえやましおり)は頭を下げる。最後まで突き刺さる上司たちの視線に、詩織は「ようやく終わった」と安堵の息を吐いた。

詩織は大学を卒業し、今年この会社に入社したばかりである。先輩に仕事を教わっていたある日、こう言われたのだ。

「うちの会社では、新入社員はプレゼン力を上司に見てもらわなきゃいけないんだ」

部長たちが揃う中、新入社員はパワーポイントや資料を作成し、発表をしなくてはならない。この発表の成果により、今後の昇進などが大きく変わっていくのだと先輩に教えられ、詩織は過去一番と言えるほどの緊張を感じながらも何とか乗り切ったのだ。

「資料もパワーポイントも見やすいね」

「緊張していたようだけど、ちゃんと笑顔もあったし素晴らしい!」