「お前……やっぱり見てたな」


じとって睨むと、ミーコは「あ……」と声を出して口元を押さえた。

そしてシュンとして「ごめんなさい」と呟く。


「好きかどうかわからなくても、可愛いなぁとかキレイやなぁ……とか思ってる子とそういうムードになれば、オレはノリでキスぐらいする。ってか、キスする理由なんてそれで充分ちゃうん?」


「ノリでキスって……。なんか……軽い……」


「ショック?」


ミーコは黙ったまま頷いた。



「ショックかもしれへんけど、オレはそういう男やから。だからオレみたいな男にひっかかったらあかんよ」


彼女の頭をポンポンと撫でた。


「わかりました」


ミーコはそう呟くと、門を開けて中に入っていった。


だけど、玄関ドアに手が掛かった瞬間、その動きが止まった。

クルリと向きを変えてオレの方へ振り返る。



「また……行きます。純粋にお客として……ですから。ストーカーじゃないですから。気にしないでください」


「あのさぁ……」


「わかってますっ」


ミーコは焦るようにオレの言葉を遮った。


「言いたいこと、わかってます。けど……今はこれ以上言わないでください」


それだけ言うと、ペコリと頭を下げて玄関の中に消えていった。