オレの答えが予想外だったのか、ミーコは目をまんまるにして驚いている。


「キミは……“好き”か“そうじゃないか”しかないの?」


――どういう意味?

いかにもそう言いたげに眉をひそめて、ミーコはブツブツ呟く。


「好きか……そうじゃないか……?」


「わからへんのやったらいいわ」


「じゃ、オレはこれで」と手をヒラヒラさせて立ち去ろうとしたその時、ミーコはぐいとオレのシャツの裾をつかんだ。

それはかなり力強くて、オレは後ろに反り返りそうになった。


「おわっ」


「ま、待ってください! それってどう意味なんですか? 教えてくださいよ!」


今度はすがるような目で見つめる。


「んー。言葉にするのは難しいねんけど。しいて言えば、“わからへん”って感じ?」


「わからない?」


「そ。ちょっと気になるし、お近づきになりたいねんけど……。『好きか?』って聞かれたらまだ『わからへん』としか答えられへん微妙な心境」


恋の初めってだいたいそんな感じがする。

オレはそんな時期が結構好きだし、そこんとこの過程を楽しみたいって思ってる。

オレの答えにしばらく考え込んでいたミーコは、「じゃ、じゃあ」と声を上げた。


「“好きかどうかもわからない”のにキスしちゃうんですか?」