その日の夜、

スミレさんは閉店作業をしに、10時前に店に戻ってきた。


「もう帰っていいよ。後は1人でできるから」


そう言われても、彼女を1人残して帰る気にはなれなかった。


「手伝いますよ」


オレは彼女の手から食器を受け取り、棚に片付けていく。


「ありがとう。助かるわ。ホント言うと、一番上の棚は手が届かなくて……いつも踏み台使ってるの」


その高さはたしかに微妙だった。

彼女は女性にしては背が高い方だと思う。

背伸びをすればギリギリ届きそうな気もするが……。


おそらく足が不自由で、背伸びができないのだろう。


「背、高いね。何センチ?」


一番上の棚に楽々手が届くオレを見上げたスミレさんが尋ねる。



「どうかなぁ。最近測ってないから……。多分、180はないと思いますけど……。あ、でも今もまだ伸びてるんで、ひょっとしたら超えたかも」


「まだ伸びてるんだ?」


「つっても、1年に何ミリか……程度のもんっすよ?」


「ケンジ君と同い年だもんね。男の子はまだ伸びるか……。今18?」