「言っとくけど、バイト内恋愛は禁止やで! お前、手ぇ出すなよ!」


「え?」


一瞬驚いたオレは「ふーん……」と呟きニヤリと笑う。


「可愛い子、いるんや。それは楽しみやなぁ」


その言葉に、ケンジはハッとしたような顔をして「ヤバい。言うんじゃなかった……」とかブツブツ呟いている。


「ほんまに、あかんで!!」


ていうケンジの叫び声を無視してオレはヤツに背を向けた。



「って、ああ!! お前、何書いとんねん!! “偽善者”って何やねん!!」


ようやくオレの書いたメッセージに気づいたのか。

ドアを閉める瞬間、ケンジの叫び声が病室内から聞こえてきた。



そう。

――偽善者。


腕一本と引き換えに守ったのは


ホントにネコの命だったのか……?


それとも罪悪感に苛まれる自分自身?


さて。

本当に守りたかったのはどっちだ?



なんて考えてしまうオレは


やっぱ相当なひねくれ者だ。