「そういえば、人でも1/fのゆらぎの声を持つ人がいるって言われてるねん」


「すごいですね。人を安らかな気持ちにさせるような声を持ってるってことですか?」


「うん」



ふと、スミレの顔が浮かんだ。


ひょっとしたら彼女の声は“1/fのゆらぎ”なのかもしれない。


初めて会ったときから、オレの心に響く声。


時にはオレを安心させてくれて……。


だけど今はスミレのことを考えると、胸が痛くて不安が押し寄せてくる。



「どうかしたんですか?」


心配そうにオレの顔を覗き込んでくるミーコ。


「あ、いや……」


いつもなら、こんな弱音を誰かに吐くことなんてなかったんだけど。

熱のせいか、オレの口からはポロポロと言葉がこぼれてきた。



「オレとスミレってつきあってんのかな……って思って」


「え?」


「オレら……考えてみたら、一度もお互いの気持ちを口に出して確認したことがないねん。『好き』って言葉すら。そんなんヘンやろ?」