「え?」


とミーコはオレの顔を見上げる。


「ろうそくの炎とか、さざ波とか、木漏れ日とか、人の心拍とか、予測できへん不規則な……ある種の周波数を持つものを“1/fゆらぎ”って言うねん。
まだはっきりと解明されたわけじゃないけど、人が安らぐ何かがそこにあるらしい」


「へぇ……。たしかに、この規則的でない微妙なゆれ加減がなんか見てて飽きないんですよねー。あ……でもなんかわかる気がする」


ミーコは何かを思いついたような顔をした。


「人の心音も“1/fのゆらぎ”なんですよね?」


「ああ」


「人って胎児の時、お腹の中でお母さんの心音を聞いてるわけじゃないですか」


「うん」


「だからその時の記憶が残ってて、“1/fのゆらぎ”に触れると、お母さんに守られているように安心するんじゃないですかね。あたしの仮説、どうです?」


人差し指を顎にチョンチョンとあてて、ちょっと自慢げなミーコ。


「さぁ、どうやろうなぁ。お前が言うとなんか信用できへん」とからかうと


「失礼なっ」


って、またプリプリ怒る。