「ねぇ……10年前のこと……ホントに思い出せないの?」
いつものようにベッドで肌を重ねた後、ふいにそんな質問をされた。
「え……? 10年前?」
「うん。前に言ってたでしょ? 『途中から記憶がない』って」
ああ……茅野神社の雑木林でのことか。
突然の質問に少々戸惑う。
スミレの方からこの話題を振ってきたのは初めてだったから。
というか、この話題には触れて欲しくないのかな……って思っていたから、オレはあえて避けていたんだ。
「ああ、うん。思い出せへんねん」
スミレの髪を撫でながら、あの日のことを考える。
「スミレがミルキーくれたのは覚えてるねん。それを口にしたのも。けど、その後のことは……」
やっぱりいくら考えても思い出せない。
なんとなくイメージできるのは、ひざを抱えて小さくなってるオレ。
真冬だというのに、コートも羽織ってなくて、寒くてガタガタ震えてた。
秘密基地の中がどんどん暗くなっていって、不安で……。


