オレはパッと顔を上げた。



ミーコはおだやかな表情で微笑んでいた。

そして、もう一度同じことを言う。



「恋、してみたかったんです」


「恋?」


「はい……。相手は誰でも良かった……っていうわけでもないんですけど……」


ヘヘっと照れたように笑う。


「キレイだったんです……」


「え?」


相変わらずミーコの話は、予想がつかない方向へ飛ぶ。


「あの日……。スミレさんとサトシさんがキスしてるのを見た時……ドキドキしました」


ああ……ミーコが目撃したキスシーンのことか。


「やきもちとかそういうんじゃなくて……。なんか映画でも見てるみたいに、キレイだなぁ……って思いました」