マンション前で待つこと30分。


時々、前を通るマンションの住人に冷ややかな目で見られながら

ひょっとして……オレって今ストーカーっぽいことしてんじゃねーか

なんて自問したりしていた。



するとカツカツと靴音が聞こえてきて、

顔を上げるとスミレさんがこちらに近づいてきていた。


スミレさんはオレに気づいてもたいして驚きもしなかった。

オレがここに来ることぐらい予想していたかのようだ。



「ずっと待ってたの?」


まるで幼い子供に尋ねるみたいな言い方。


「説明して」


「え?」


「あの男のこと」



オレはできるだけ感情を抑えて言う。


「スミレさんの言葉でちゃんと説明してくれ。
オレにはそれぐらい聞く権利あると思うけど」



「うん……そうだよね……」


スミレさんはスッと息を吐き出した。


「彼は桂木さんといって……東京にいた頃からの知り合いなの」


「“知り合い”?」


こんな言い方をするってことは少なくとも恋人じゃないってことか。

オレはホッと胸をなでおろした。



「……チアキ君のお父さんなの」