「うわっ……すみませんっ。あたしのです」


彼女はペコペコと頭を下げながら鍵を受け取った。


「っていうか……あのっ……すみませんっ。あたしっ、あの勘違いしてたみたいで……」


「勘違いって。痴漢と?」


ムスっとしたオレに、「あっ、違うんです」と慌てて手を振る彼女。


「さっき、すごくしつこく声かけてくる人がいて……やっと振り払ったとこだったんです。まだついてきてるんかなって思って……それで……その……」


「ナンパかいな……」


「はい……。あっ、ほんとごめんなさい」


ナンパ男と間違えられたのか。


間違いついでに、本当にナンパでもしてやろうかと、じっと彼女の顔を覗き込む。


悪く……はない。

平均点。

ネコ目が可愛いから、プラス5点。


「あの……?」


キョトンと首を傾げて、「えーと」なんて言いながら目を泳がせている。

どうしたらいいかわからなくて、困ってる感じ。



小柄で丸顔。

フワフワとやわらかそうなショートボブが……

あの子とちょっと重なる。


やっぱパス。


「じゃ、気ぃつけやー」


オレはそれだけ言うとくるりと背を向けた。


――純情キャラはもうゴメンだ。

というか、元々、この手のタイプは苦手なのだ。



「あ、ありがとうございました!」


その声を聞いて数歩進んだところで



「ああっ……!!」


今度は背後から叫び声が聞こえた。