「へ?」


叫び声をあげられて、思わずひるんだ。


ひょっとして、痴漢か何かと間違われてる?


何やねん。

今日は厄日か?


あー。

ダルイ。

ダルイ。

全部めんどくせー。



「この鍵、キミの?」


痴漢だと思われてるとしたら心外だ。

ムッとしながら、鍵を差し出した。



「え? 鍵……?」


振り向いた彼女は、何かにおびえているかのようだった。

目なんてちょっとウルウルしちゃってる。

ちょっと目尻がつり上ってて、大きな黒目がちの瞳。

長い睫毛がクリンって上向きにカールされてる。


こういうのネコ目っていうのかな。

なんて一瞬、そんなこと考えていた。


彼女はそのネコみたいな目をパチパチさせてオレを見上げる。


「えっ? あれ?」


オレはさらに鍵を差し出した。


「はい。落し物。これ、キミのやろ?」