ミル*キス

「東京が停電に見舞われてしまうねん」


「停電?」


「うん。しかもすぐには復旧できへんような。もう街から全ての明かりが無くなってしまうような……まさに大停電」


「うん」


「で、とある路地裏に1軒のバーがあってね。そこのマスターはジャズのベーシストで、自分の夢をかなえるために恋人と別れて単身、ニューヨークへ行ってしまうねん。

何年か経って、日本に戻ってくるんやけど、その時にはすでに彼女は別の人と結婚してるわけ。

でも、彼女の結婚生活はあまり幸せそうじゃなくて……。だから彼は彼女に一緒にニューヨークへ行こうって誘うねん。再び二人でやりなおすために。

一緒に来てくれるなら、クリスマスイブの晩に店に来てくれって言うんやけど。そこで大停電が起こる。

さて、クリスマスイブの夜……。

彼女はやってくるのか……っていう話」




「へぇ……。つまり、旦那を取るか、元カレの元へいくか…って話っすね」


「うん、まぁ、そんな感じ。今の生活を大事にするか……それとも昔の恋にもう一度賭けてみるか……みたいなね」


「で、結局彼女はどうしたんです?」



ルウさんは眉間にシワを寄せて「うーん……」と唸る。