たしかにこの曲はオレも気に入ってた。


スミレさんももしかしたらそうなのかもしれない。

この曲をよくかけていたから。


「この曲ってさ……」


コーヒーカップを両手で抱えて、ルウさんがゆったりとした口調で話し始めた。


「“大停電の夜に”って映画で使われてたんだよね。知ってる?」


オレは首を横に振った。

その場にいる誰もその映画を見たことはなかった。


「どんな映画なんですか?」


ミーコが問いかけると

ルウさんは映画の内容を説明してくれた。


「あるクリスマスイブの晩にね……」