そしてついにバイトの最終日がやってきた。

いつもは6時には店を出るスミレさんだけど、今日は違った。


なんでも予定が1日ずれて、チアキ君とかいう男の子は、昨日の夜、親元へ戻ったのだとか。


閉店間際の午後9時過ぎ。

店内には、スミレさん、ルウさん、ミーコ、そしてオレの4人だけになっていた。


「今日でサトシ君、最後やねんね」


コーヒーカップを手にしたルウさんが言う。


「ええ。ルウさんにはほんまにお世話になりました」

「なんか寂しいわぁ」

「また来ますよ。今度は客として」

「ほんまやでー! 絶対来てや!」

「って、ルウさん、そんなにオレのこと好きやったんですか?」

「なんていうか、目の保養? あー、この一週間、イケメンが見れて充実してたわぁ」

「あはは。なんやねんそれ」

「ほんまに。あたしがあと10歳若かったらなぁ……絶対口説いてたし」

「げっ……申し訳ないけど。それはカンベン……」

「ちょっ、なんでよ? アンタって、最後まで客に暴言吐くね」


ルウさんのその言葉にみんなで笑った。



けど、ひとしきり笑った後、

ルウさんがもう一度「寂しいなぁ……」なんて言うもんだからなんとなくしんみりしてしまった。


と、その時、ふいに店内に流れていたジャズが途切れた。