駅前には商店街が続いていた。


花屋の前に差し掛かったとき、足が止まった。



――花ぐらい買ってくべき?


いや、アイツに花なんかもったいないやろ。


そう思って立ち去ろうとしたら、誰かの肩とぶつかった。


「あっ、すみません」


「いや、こっちこそ」


――チャリン


金属音が響いてそちらに目を向けると、アスファルトにキラリと光るもの。


指でつまんで目の高さまで掲げる。


鍵だ。

おそらく家の鍵だろう。



今ぶつかった子が落としたのかと振り返る。


セーラー服姿の女子高生が、スタスタと去っていく。

鍵を落としたことなんてまるで気づいていないようだ。


「おーい」


彼女の背中に向かって声を投げかける。


聞こえなかったのかな?

なぜか彼女は振り向くどころか歩く速度を上げた。