ミル*キス

寝起きで頭が回らないのか、しばらく黙り込む母。


《ああ……》と相変わらずかすれた声で説明を始めた。


《家政婦さんのこと? うん、そうやねん。フジさんと昨日話してて、まぁ、そういうことになって》


「そういうこと……って、オレ、そんな話、全然聞いてないんやけど」


《あー、ごめんごめん~。言うの忘れてたぁ……》



チラっとミーコを確認してから、廊下に出て小声で話す。



「つうか、知らんやつ家にいれるってどうなん?」


《大丈夫でしょ。フジさんのお孫さんらしいし。赤の他人よりも安心やん?》


「でも、まだおかんは会ったことないんやろ?」


《そうやねん~。どんな子なん? 可愛い?》


「……」


《あ! 言っとくけど、アンタ、ヘンなことしたらあかんで》


「するか!」



なんとなくだけど、アイツにだけは手を出さない自信があった。

あんなのと間違いでも犯したら、すっげー面倒なことになりそうだ。



《それならいいけど。アンタ、女にだらしないからね~》


あははと笑う母の声が耳障りで、思わず携帯を耳から少し離してしまった。


あー……も、こういうの、マジでダルい。