「じゃ、また……」


ドアの外に出たオレは振り返ってそう言った。


なんだろ?


さっき思い出した過去の記憶のせいかな。


急に胸がざわざわとして、言葉に表せないぐらいの不安に包まれる。


なんか、人肌が恋しい。

誰かに抱きしめられたい。


そう思ってトモミさんの瞳を覗き込んでいたら、ふいに彼女の顔が近づいてきた。


オレもほんの少し腰をかがめる。


どちらともなく近づけた唇が触れそうになった瞬間


スッと手のひらでキスを遮られた。


「やっぱダメぇー。口紅とれちゃう」


口角を上げてニヤリと笑う。


「その気になったら、また来てね」


その言葉を最後に、ドアは無常にもパタンと閉められた。


すげぇ……。

まれに見る小悪魔キャラ。


久々に手のひらで転がされたって感じ。