ミル*キス

「代わりの人に来てもらわれへんのか?」


相沢さんの問いかけに母は「うーん……」と渋い表情。


歳も歳だから、本来なら引退させて、そろそろ別の人に代わってもらう方がいいんだろうけど。


フジさんは家政婦専門の派遣会社……とかから来てるわけじゃなくて、母の知り合いから紹介してもらった人なのだ。


鍵を預けるほど信用できる人なんてそうそういない。

オレらにとって、フジさんはもう家族みたいなもんで、誰も代わりになんてなれないのだ。


「フジさんからは、代わりの人をよこすから……って言われてるんやけど。……どうしようかなぁ……って迷ってるとこ」


どうやら母もオレと同じようなことを考えているらしい。


「まぁ、そのことはまたフジさんと相談するわ。シャワー浴びてこよっと♪」


母は、ふああああと大きな伸びをして立ち上がった。



コーヒーカップを手にして、ふと部屋を見渡すと、相沢さんのおかげで、少しずつ部屋がキレイになっていった。


この人はほんとなんでも得意だな。

なんならオレの嫁に……。


なんてアホなこと考えていると、相沢さんと目が合った。


そうだ。

相沢さんは覚えているかな……。


あの時のことを。