ミル*キス

「だあああああ。この家は掃除するヤツおらんのか!」


相沢さんの声でハッとした。


見ると、床に散らばった服や雑誌を拾い集めている。

たしかに、この現状はひどい。

ここんとこ一週間ぐらい、まともに掃除機すらかけていない。


「だって。富志(フジ)さんがおらへんし……」


自分で掃除をする……という選択肢は母にはないのだろう。

気だるそうに答えた。


フジさんというのは、通いの家政婦。

週に3日ほどやってきては、掃除や洗濯、

オレのための夕食まで用意してくれたりする。


たしかオレが小学校に上がった頃から、うちに来てくれている。


家政婦が事件を解決する……なんていうサスペンスドラマがあるが、ルックスとかまさにあんな感じの人だ。

オレにとってはおばあちゃん的存在。


そのフジさんがぎっくり腰で入院したのは、先週のこと。