ミル*キス

「あー。腹へったー。なんか食いもんある?」


オレは何も聞いてなかったという風を装って、いつもの調子でリビングの中に入っていった。



菓子か何かあればつまもうと思ってた。

それなのに。


「カレーならあるよ」


「へ?」


キッチンの方へ行く母を呆然と見つめた。


言われてみて気づいた。

かすかにカレーの匂いがする。



「ひょっとして、作ったん?」


「うん。あるもんで適当にね」


その日は日曜だった。

店は休み。

いつもは外食かケータリングで済ますのに、なぜかこの日、母はカレーを作っていた。


「ふーん……」


なんだか居心地悪いようなくすぐったいような不思議な気分で、カレーを待つことにした。


だけど、キッチンからは「あ!!」という叫び声。