ミル*キス

崩れるようにフローリングに寝そべった。


テレビでは次のニュースが流されていた。

動物園でこの春に生まれたサルの赤ちゃんの映像が映し出される。


母親に抱きかかえられて安心した顔で眠っている。


そんな映像をぼんやり眺めていたら、じわりと景色がゆがんだ。


「くそ……」


泣きたくない。

悔しくて。

絶対涙なんか流したくなかった。

自分の意思に反して震えてくる唇をギュっとかみ締めた。



傷ついてる……。

違う、そんなんじゃない。


もっと不安で……。

胸がかきむしられるような感覚。



幼い頃の記憶が蘇る。

あの時も同じことを思ったんだ。

あの雑木林で。

ひざを抱えて震えていたオレは。


――オレは……オレは……ったのか?



胸が苦しい。

呼吸が乱れる。

ヤバい。

この症状をオレは知ってる。


フラフラと立ち上がると、今度はベッドにもぐりこんだ。


布団を頭までかぶる。

ギュっと目を閉じた。


何も考えるな……何も考えるな……。


呪文のようにそう言い聞かせて呼吸を落ち着かせる。


やがて、だんだん意識が遠くなっていった。