◯寝室・朝
響希「妃那乃様、おはようございます。お時間にございます」
妃那乃「…うーん、もうちょっと寝かせて」
布団に丸まる妃那乃。
朔弥「…ったく、お嬢様さっさと起きてください」
朔弥が妃那乃の布団をはがす。
それでも起きない妃那乃。
湊斗「仕方ないなぁ、僕達のお姫様は。さっさと起きないとキスしちゃうよ?」
湊斗が妃那乃の耳元で囁く。
その言葉に妃那乃は勢いよく上半身を起こす。
響希「ようやくお目覚めですか、お嬢様」
朔弥「…おせーっつーの」
湊斗「ちぇっ、起きちゃった。せっかくキスできると思ったのに残念」
妃那乃「…」(怒りを抑えてる)
「もー!着替えるから3人とも早く部屋から出てってー!」

◯学校までの道
響希「お嬢様、何をそんなに怒ってるんです?」
妃那乃「…別に。ってか何で学校まで執事のあんた達と一緒に行かないといけないの⁈」
朔弥「仕方ねーだろ。お前に何かあってもいけないし、っつーかお嬢様なら車で行けよ、車で」
妃那乃「…あんたは自分が楽をしたいだけでしょ。車は目立つから嫌なの」
湊斗「僕は別に歩きでいいけどね。その方がお嬢様と一緒にいられる時間長いもん」
妃那乃「…湊斗はくっつきすぎ。歩きにくいよ。私はなるべくあなた達と一緒に歩きたくないの。あなた達と歩くと目立つもの。目立つのは嫌。みんな私自身をみてくれてない。見えてるのは如月っていう肩書きだけ」
三つ子は顔を合わせる
響希「そんな事ないですよ。少なくとも僕達三つ子にとってはね。あなたはお嬢様の前に大事な幼馴染ですから」
朔弥「…ったく、そんな風に考えてたのか」
湊斗「そんな事思われてたなんて、寂しいなぁ。今度そんな事言ったら僕怒るよ?」
朔弥「中にはお前を如月流の家元の孫ってだけで近づく奴もいるかもしれねーけど、そんな奴いたら俺らがお前を守ってやるよ」
朔弥が妃那乃の頭に手を置く。


◯回想中(妃那乃)
私の両親は5歳の時に交通事故で亡くなった。
唯一の身内である祖父に引き取られ、そこで出会ったのがこの三つ子だった。
この頃の私は両親がいない寂しさでよく泣いていた。ある夜、泣いてる私を三つ子達が祖父にバレないように家から連れ出してくれて近くの公園の芝生に寝転がって4人で星を見た。
妃那乃「わぁー…綺麗」
朔弥「うん。お前のお父さんとお母さんは星空にかえったって家元から聞いた。お前には俺らがいるし、寂しくなったらここにまた連れてきてやるよ」
妃那乃「…いいの?でもおじいちゃんに怒られちゃうよ」
朔弥「いいんだよ。その時は俺らがお前を守ってやる」

◯回想終了
妃那乃「…朔弥、響希、湊斗」

◯学園(校門付近)
女子達「きゃー!いらしたわよ!」
朔弥「…ったく、うるせーな」
響希「朔弥、女の子には優しくしないと」
女子AとB「響希様、おはようございます」
響希「おはよう」
朔弥「…めんどくせ」
女子C「あっあの…朔弥さ…きゃっ」
朔弥「!」
朔弥が転びそうになった女子を支える
朔弥「…あっぶな。気をつけろよ」
女子C「あっありがとうございます」
湊斗「もー、響希も朔弥もお嬢様の前なのに他の女の子のところにいくなんて…なんてだらしない兄貴達なんだろ」
女子D「湊斗君、おはよう!お菓子持ってきたけど食べる?」
湊斗「え⁈お菓子⁈わーい、食べる食べるー!みてみて、お嬢様!こんなにたくさんお菓子もらっちゃった!」
妃那乃「…わー、よかったねー」(あんたが1番だらしないよ。ったく…だから目立つから嫌って言ったのに)
妃那乃がため息をついてると後ろから声かけられる。
夏帆「相変わらずあんたの執事達はモテモテだね」
妃那乃「夏帆!おはよう」
夏帆「おはよう、もうすぐ予鈴なるよ、早く行こ」
妃那乃と夏帆は玄関まで走る

◯教室 授業中
先生「ではこの間のテスト返すぞ。名前呼ばれたら取りにくるように」
妃那乃が名前呼ばれ先生のところまでテスト取りに行く。
先生「如月もう少し頑張ろうな」
妃那乃(げっ…35点)
妃那乃が席につきテストを眺める
朔弥「…お前、その点数やべーな。家元がこの点数見たら泣くぞ」
妃那乃「ちょっ…勝手に人のテスト見ないでよ」
朔弥「仕方ねーだろ、隣の席なんだから見えちまうんだよ」
妃那乃「そういう朔弥はどうだったのよ?」
朔弥「ん」
朔弥が妃那乃に点数をみせる
妃那乃(ま…満点…負けた…)
朔弥「まぁ、そう落ち込むなって俺が手取り足取り教えてやるからさ。なんなら…勉強以外の事も教えてやろうか?」
朔弥が妃那乃の髪先を手に取り口付けする。
妃那乃「…」(怒りと恥ずかしさを抑えてる)


◯家までの道 夕方
響希「そういえば今日お嬢様のクラスでテスト返却されたそうですね。いかがでしたか?」
朔弥「それがさー、聞いてくれよ。こいつ…」
妃那乃「わー!そっそんな事なんだっていいじゃない」
妃那乃は慌てて朔弥の口を両手で押さえる
湊斗「あーあ…いいなぁ、朔弥だけお嬢様と一緒のクラスでさー」
妃那乃「私は人のテストの点数勝手にみるような朔弥とずっと一緒にいるの嫌だけど」
朔弥「おまっ…だからあれは見えたんだっつーの。ほんとしつこい奴だな」
妃那乃「はぁー⁈しつこいって何よ」
響希「二人ともそのへんで。…もうご自宅の前ですしね」
妃那乃と朔弥「あっ…」

◯玄関
妃那乃「ただいまー」
新橋〈家元に仕える執事〉「おかえりなさいませ。妃那乃様」
家元(祖父)「おかえり。何やら外が騒がしかったが大丈夫かね?」
妃那乃「だっ大丈夫だよ」
家元「ならよいが。早く着物に着替えてきなさい。お前に大事な話がある」
家元と新橋は部屋へ戻る。
妃那乃と三つ子達は顔を合わせる。
妃那乃「…大事な話?ねぇ、お祖父様の大事な話って何?何か聞いてる?」
響希「いえ、私達は何も聞いてませんが…なんでしょうね」
朔弥「お前の今日の35点のテストの事じゃねーの?あっ…」
響希と湊斗「35点⁈」
妃那乃「バカ朔弥!なんでバラすのよ!」
湊斗「僕より頭悪いね…」
妃那乃「…」(恥ずかしさと怒りで下を向く)
響希「こら、湊斗。お嬢様に失礼ですよ。コホン…おっお嬢様、とりあえず家元お待ちですので着替えてきては?」

◯家元の部屋
部屋で着替えを済ませ家元の部屋へ向かう妃那乃。
妃那乃「お祖父様、妃那乃です。入ってもいいですか?」
家元「あぁ、入りなさい」
妃那乃「失礼いたします。…それで私にお話というのは…」
家元「あぁ、実はな…お前にお見合いの話があってな」
妃那乃「…えー⁈私がお見合いー⁈」
その時、部屋の扉が開き三つ子が勢いよく入ってくる。
朔弥と湊斗「ちょっと待ったー!」
妃那乃「ちょっ…あんたたち、何で…」
家元「何だ、お前達聞いておったのか」
朔弥「そっそれより…こいつが見合いって…」
響希「こら、朔弥。家元の前ですよ。…申し訳ありません。家元。話が聞こえてきたものですから…」
家元「…まぁいい。お前達も聞きなさい」
  「お見合い相手というのがな…
私の古くからの友人のお孫さんでな。
歳はお前達の3つ上だ」
妃那乃「3つ上…」
家元「…どうだ?妃那乃。見合い受けるか断るかはお前次第だ」
3つ子は妃那乃をみる
妃那乃「その話お受けします!」
朔弥と湊斗「決断はやっ!」
朔弥「おっお前…わかってるのか⁈お見合いだぞ、お見合い!相手の顔もみねーで決めちゃっていいのかよ⁈」
湊斗「そうだよ!そんな簡単に決めていいの⁈」
妃那乃「いいの!私は早く結婚してこの家を出るの」
響希「はぁ…仕方ありませんね。お嬢様がそこまで言うなら…」
朔弥「響希まで何納得してんだよ」
響希「…家元。それなら私もお嬢様の婚約者候補に入れてください」
朔弥「あっお前!ずるいぞ!それなら俺も婚約者候補になります!」
湊斗「僕も!家元お願いします」
家元「…ふむ。そこまでいうなら3人とも婚約者候補として認めよう」
妃那乃「ちょっ…ちょっとお祖父様!」
家元「…しかし、妃那乃の婚約者になったからにはそれ相応の覚悟をするように。妃那乃、
先方には見合いお受けする返事をしておく。それでよいな?話は以上だ」

◯廊下
妃那乃「ちょっと!何であんな事言ったの⁈」
響希「…あんな事?婚約者に申し込んだ事ですか?私達じゃいけませんか?」
朔弥「何だよ、執事が婚約者候補になっちゃいけねー決まりねーだろ」
湊斗「そうそう、それに誰かもわからない男との見合いを引き受けるバカなお嬢様をこのままほかっとくわけにはいかないしね」
妃那乃「バッバカって何よ!あんたたちは執事として私のこと心配してるだけでしょ⁈」
響希「…執事として…ですか」
朔弥「…んなわけねーだろうが」
湊斗「…執事としてじゃなく一人の男として僕ら心配してんだけど?」
妃那乃「…⁈」
響希は妃那乃の右手に口づけする
響希「仕方ないお嬢様ですね…私の気持ちに気づかないなんて…こんなにもあなたの事をおもってるのに」
朔弥は妃那乃の髪に口づけする
朔弥「ったく…本当鈍いお嬢様だな。まぁ、これからお前をゆっくり振り向かせてやるよ」
湊斗は妃那乃の左手に口づけする
湊斗「言っとくけど…僕嫉妬深いから他の男の事見るなんて許さないからね?」
三つ子「覚悟しろよ」
妃那乃(わっ私、これからどうなっちゃうのー⁈)