◯港近くの廃工場
家元「妃那乃…すまなかった。実は見合いがあるというのは嘘だったんだ」
妃那乃「え…嘘?」
神崎流家元「私が頼んだんだ。妃那乃ちゃんには悪いと思ったんだが…響希、朔弥、湊斗の誰かに神崎流次期家元を継いで欲しくてね」
響希「父さん、それは…」
神崎流家元「わかってる。お前達は妃那乃ちゃんが寂しくないように如月家の執事としてそばにいた事も…そしてこれからもいたいことも…しかしな…私もお前達以外の者に次期家元を継がせる気はない」
朔弥「…なんつー頑固な親父だよ」
神崎流家元「それはお互い様だろう」
妃那乃「あの…そこでなぜ私に嘘の見合いを?」
家元「妃那乃がずっとこういう世界ではなく、自由な外の世界に憧れていたのは知ってる。元々はお前はそういう自由な世界にいたのだから…時々窓の外を見てため息をついていたお前を見たらわかる。しかしな…娘夫婦が事故で亡くなりお前まで失う事は私も怖い。今回の事で本当にそう思った」
神崎流家元「私も今回の事では本当に申し訳ないことをしたと思う。見合いなど嘘をつかなければ誘拐などされずにすんだのに怖い思いをさせてしまったね。朔弥達もすまない。お前達の妃那乃ちゃんに対する想いがただの執事としてではないことはわかってたのに…すまなかった」
響希「…そうですね。いくら父親といえども私達の大事な人に嘘をつくなんて許されることではありません」
湊斗「…ほんと、妃那乃ちゃんが誘拐された事知ってどれだけ僕達が心配したか…本当はあの誘拐犯を海に沈めてやりたいくらいだけど」
朔弥「…俺らの事はいい。ただ妃那乃に怖い思いさせたのは許さない」
妃那乃「3人とも…もういいから」
家元「妃那乃…まだ外の世界に憧れるか?」
妃那乃「…最初は憧れてた。一般の家庭の人と結婚したら外の世界へ出てお父さんやお母さんみたいに幸せな家庭を築きたいって思ってた。でも今回の事で如月流家元の孫って知って悪だくみを考えてる人達も外の世界にいるんだって思ったら怖くなった。幸せな家庭ならどこの世界だって作れる」
神崎流家元「…妃那乃ちゃん、朔弥達は悪い奴ではない。どうだろうか?この3人の中から結婚相手を選んではくれないか?」
家元「妃那乃…お前も朔弥くんたちの気持ちにはもうとっくに気づいてるじゃないのか?」
神崎流家元が三つ子を見る
神崎流家元「私は妃那乃ちゃんが結婚相手に最終的に選んだこの中の誰かに次期家元を継いでほしいと思っている。」
驚く三つ子と妃那乃。
妃那乃はしばらく考え、静かに口を開く。
妃那乃「わかりました。この三つ子の誰かと結婚しましょう。ただし…時間はほしいです。
本気でこの中の誰かを執事や幼馴染としてじゃなく男として好きになるまで」
神崎流家元「ありがとう。返事はいつでもいい。ゆっくり自分が本当に誰と夫婦になりたいのか考えなさい」