涼井に背中を押されて、電車に乗り込む。


なんで俺と涼井は反対方面の電車なんだろう。


同じ電車だったなら、もっと時間があったなら、


涼井の記憶に、もっと俺が残るはずなのに。


俺の記憶に、もっと彼女が残るはずなのに。


振り返ると、涼井も反対方面の電車に乗り込んでいた。


寂しそうな背中。


「涼井!!!」


ぱっと彼女が振り返った。


「また明日!!!」


電車の窓越しに見える咲きかけのひまわりと涼井が、怖いくらいに記憶に残った。


「…うん、また明日」


小さく微笑んで、どんどん離れていく。


大丈夫だ。まだ、明日がある。


まだ、時間はある。


けど、その明日は、想像以上に先のことになった。