学生寮

「ああ、えーと、皆さんいい人ばかりだよ。
試験前に勉強教えてくれたり。
今回の旅行も寮の人の親戚の旅館だから、一緒に行かせてもらったの。
あ、でも裕子も一緒に行ったんだよ」


しどろもどろになりながら、そう答えた。


「フーン、まあ、いいわ。
明日もあさってもあるしね。
この半年のこと、ゆっくり聞かせて。
お父さんは会社があるけど、私は暇だから、明日は一緒にショッピングでもしましょ」


えー、リョウさんとデートなのに。

でも、またすぐにシンガポールに戻るという母の誘いを断るのも悪いし。

しかたない、ここは母を優先させよう。

リョウさんに断りの連絡を入れなきゃ。


食事を終え、寮に帰る伯母さんをロビーで見送った。


部屋に戻ったら、もうリョウさんへ連絡するチャンスはない。


そう思い、私はホテル内の売店で買いたいものがあるから、と両親を先に部屋へ帰らせた。