その後も、私とリョウさんの関係に進展はなかった。


私は、海と空とに感動して自分の小ささを思い知ったけれど、具体的には何も将来のことを思い描けなくて。


とりあえず自分の得意教科を元に、進路調査票には私大文系クラス希望と書いて提出した。



そして冬は過ぎ、春がやってこようとしていた。

3月。



夕食時、バイトから帰ってきたカンジさんが食堂に入ってきた。

どかっとソファに座ると、カンジさんは先に来ていたタカさんとリョウさんに話しかけた。

「あー、疲れたー。
なあ、もうすぐ春休みじゃん、どっか温泉でも行かねえ?」