ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~

お母様の登場の後、私達は別れた。
喧嘩別れをすることもなく静かに彼は私の前から消えていった。
私自身も彼に未練はなかったようで、それ以来会いたいと思ったこともない。
ただ、私はその後誰かを好きになることに臆病になった。
きっと彼のことがトラウマになって人を信じられなくなったのだろうと思う。
だからこそ、人に甘えず、黙々と仕事に励んだ。
いくら上司にかわいげがないと言われても、まじめに仕事だけをした。
おかげでの商社の営業職に配属もされ、それなりの実績だって上げた。
それが・・・

「女はニコニコ笑顔でかわいく笑っているのが良いのよね、きっと」
またこぼれ出た心の声。

今から2か月前、直属の上司である課長の小さなミスがきっかけで大口取引先との契約が1つダメになった。
普段は私が担当をしていた企業だったため、どうにかならないかと何度も交渉してみたがどうにもならなった。
そして、あろうことか課長はその責任と私に押し付けたのだ。
もちろん私は課長の上司である部長に抗議し訴えた。
初めのうちは事情を知っている部署の仲間達も一緒に怒っていてくれたのに、事が大きくなり会社からの聞き取りが始まると課長を擁護して私の責任だと言った。
それでも我慢できない私は「これは課長のミスです」と何度も会社に訴えたが聞いてはもらえず、部署内でも冷遇されるようになり、辞めるしかなくなった。