ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~

10分後、戻ってきた最上階の社長室。
私は大きくて立派なソファーにハサンと向き合って座っていた。

「それで、凪はうちに勤めてくれるの?」
「それは・・・」

確かに、今日は転職の面接と聞いてきた。
三石商事ほどの大企業に勤められるならどんな仕事でもかまわないとさえ思っていた。
しかし・・・

「僕の側で働くのは嫌なのかい?」
「そうではなくて・・・」

ハサンの提案は、私を社長秘書として採用したいというもの。
もちろん採用してもらえるのはうれしいけれど、秘書経験など皆無の私としてはためらってしまう条件だった。

「なぜ私なのでしょうか?」
どうしてもハサンの真意が聞きたくて、私は尋ねた。

「君が適任だと思ったからだよ。秘書は気が合う人でないと困るからね」
「しかし、私には秘書してのスキルはありません。もし先日の出会いが理由なら」
こういう公私混同はやめてください。
そう言おうとして、さすがに言葉が止まった。

「違うよ。仕事は仕事、プライベートはプライベート。僕だってそのくらいの分別は付けているつもりだ」
「じゃあ」
私は顔を上げハサンを見つめた。