ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~

「そんなところで何をしているの?」

廊下の先から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声。
男性が死角になって姿は見えないけれど、私にはすぐに誰なのかがわかった。

「すみません」
男性が声のする方向に頭を下げる。

どうやら男性は声の主の部下らしい。
私は会いたいような会いたくないような複雑な気持ちで姿が見えるのを待った。

「凪、会いたかったよ」

やはり、現れたのはハサンだった。
なぜ、今ここにハサンがいるのか想像するだけで恐ろしい気がするが、本人に間違いない。

「さあ、おいで」

カタールの空港でされたように右手を差し出されるけれど、今の私は素直に手を重ねることができない。

「どうしたの?」
首を傾げ私を見下ろす宝石のような瞳に、私は動けなくなった。