ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~

エレベーターから続く廊下にはシックな色合いの絨毯が敷き詰められ、廊下に飾られた花や絵画や調度などのすべてが上品で美しい。
ここは日本のはずなのにどこかオリエンタルな雰囲気があり、とてもビジネスの現場には見えない。
そう、たとえるなら海外の星付きホテル。
そう言えば、先日訪れたカタールの空港ラウンジもこんな雰囲気だった。

「ここ、ですか?」
どうしても場違いな気がして、男性に問いかけた。

「ええ」

エレベーターが開くと同時に外へ出て行きドアが閉じないようにボタンを押している男性はにこやかに微笑む。
どうやら私の向かうフロアはここで間違いないらしい。
しかし・・・

「さあ、どうぞ」
あまりにも動き出さない私に、とうとう声がかかった。