ファーストクラスの恋 ～砂漠の王子さまは突然現れる～

それから数時間、私はハサンと手を繋いだまま眠っていた。
気が付くと機内はだいぶ明るくなっていて、窓の外に綺麗な朝焼けも見える。

「朝だね」
「ええ」
ちょうどハサンも目を覚ましたようだ。

「日本まではあと3時間ほどかかるから、ゆっくり起きたらいいよ」
「ええ、そうね」

日本に戻れば私のバカンスは終わってしまう。
忙しい日常が始まり、特に私には就職活動が待っている。

「仕事を探しているんだったよね？」
「ええ、でもお話をいただいている会社があって帰ったらすぐに役員面接を受けるんです」

ラウンジで過ごす間に、前の会社を辞めたことや求職中であることは話したから心配してもらったのかもしれない。
もしかしたらどこか紹介しようかって話かもしれないが、さすがにそれは遠慮したい。
やはりハサンとの出会いは、旅のいい思い出のままでいたい。
彼のことを深く知れば知るほど、ハサンにはまりそうで怖かった。